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小さな独り言

迷子くじら。

2009年5月14日。
田辺湾にマッコウクジラが迷い込む。(2009年5月22日撮影)

2009年5月31日。
外洋に面した所まで出て行き潜水を繰り返す。

2009年6月2日 午後。
白浜沖で潜水したまま姿を消す。

ちなみに・・・
約20日間のクジラ君の滞在にあたり、
監視員延べ460人。
その他の費用も合わせるとしめて600万円かかったそうな。
田辺市の「迷入クジラ対策本部」の皆様、ご苦労様でした。
〜生命力〜

久しぶりですが書いてみようかと。
気が向いたら書いておりますのであしからず。

いつも潜りに行く、和歌山県は田辺。
その田辺湾に1頭のマッコウクジラが迷い込みました。
2009年5月14日。

当初は単純に、「見に行きたい」なんて思ったのですが、
なんとなくチャンスもなく、
時が経つに連れて、弱弱しくなるクジラ君が痛々しく、
見に行った所で何もできない事も理解していたので、
わざわざ出向くことはしなかった。

体長約15m。
推定体重50トン。
観光バス並の巨体。
船でなんとなく引っ張って外洋へ・・・
なんて、暴れだしたら、その辺の船なんぞひとたまりもない。
かといって、でっかい船の入れるような所でもない。

「見守る」
しかないのだ。

何もできない。
極論で言えば、殺す事すらできない。

巨体を目の前に何もできない人間様。
ただただ行く末を見守るだけ。

2009年5月22日。
田辺へ講習に行った帰りに、
逢いに行った。

ギリギリまで行くべきか?
行かないべきか?
迷いつつ、
「すごく近くで見れる。」と言う情報もあったので、
腹をくくって逢いに行った。

たくさんの人だかりの中に、
その巨体は手の届きそうな場所に居た。

なんでこんな所に・・・

見るからに痩せ衰え、
背中が乾くのだろうか?
時折、体をくねらせ、
「ブシュッー」と力ない潮を吹く。
体のあちこちに「血」がにじんだキズも見える。
人ごみに混じり、何枚かシャッターを切ったが、
なんだか・・・・


・・・・なんだか、、、・・・・


はっきりした理由はわからないが、
「耳」(方向感覚も司る)が寄生虫などにやられてしまったのか、
エサを追い、深入りしてしまったのか、
たぶん、お腹は底に擦ってしまってるであろう浅瀬で、
もがき、苦しむ巨体。

ものの10分程度でその場を後にした。
居れなかった。
なんとなく居てはいけない気がした。

どこか「よそ事」だった、
「田辺湾にクジラが迷い込んだ」というニュースは、
一気に現実味を帯び、「願う」事しかできない
自分に腹立たしく、いたたまれない感でいっぱいになった。

しかし、「行くべきではなかった。」とはそんなに思わなかった。
行かなければ「よそ事」で終わってしまってただろう。
行って、生々しい現場を見ることで、
感じ取れることもたくさんあるし、
思うこともたくさんあった。

正直、もうこの巨体が外洋を悠然と泳ぐ事はないだろう
と思った。それくらい弱弱しい巨体だった。


2009年6月2日。
「迷いクジラ、無事外洋へ」のニュース。

ほっとした。
自然に顔がニヤケた。
なんとなく空を見上げて、、、
・・・なにしてるんだ?と赤面した。

なんという生命力。
巨体はあなどれない。

すばらしい経験をさせてもらったと思った。


次は力強く悠然と泳ぐ巨体に逢いに行こう。
いつか、きっと。



2009/6/11 Keiji Hasuike





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