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小さな独り言

ハナイカ

2008年 05月 28日 和歌山県 田辺 ミサチ
「ハナイカ」交接中
〜決定的瞬間〜

潜行してすぐに、ハナイカのカップルを見つけた。
ちょうど産卵の時期という事もあり、
決定的瞬間が撮れるかもしれないという
期待を持って観察を開始した。

こんなシーンに限らず、
「本能」で行なわれる行動中の撮影は、簡単だ。

簡単だ・・・なんていい加減に書いてしまってけど、
こういう場面に遭遇するのは非常に難しい。

難しいのか・・・簡単なのか・・・


例えば・・・・
写真のようにオス・メスのハナイカが目の前に居る。
という事は、ハナイカのカップルの目の前には、
ばかでかいカメラを構えた、
えたいの知れないでかい生物が、
時折、ゴボゴボと泡ぶく吹きながら、
こうこうとライトを照らしてこちらをじっと見据えてるわけだ。

今から子孫を残すがための大事な営みを決行しようとするのにだ。

彼らとて、警戒せざるをえない。
邪魔者以外、何者でもない。

そんな時、私は「岩」になりすます。(笑)
出来るだけ息を潜め、微動だにせず、
「君たちに危害を加える物ではありませんよ〜。」
というオーラを全身からふりまく。(笑)
・・・・まあ、そこに居るだけで「危害」なのだろうが。。。

何かの本で読んだことがある。
「動物というのは動体視力(動いている物を見る力)は
人間の数倍ある。だがしかし、静止している物の認識力は
びっくりするほど低い。」

イカの部類にもそれが当てはまるかどーかは別にして。(笑)

じーっと動かなければ、彼らは私の事を「動く物」ではなく、
それこそ「岩」だと認識する。
「岩」が動き出すとびっくりして逃げる。
すなわち、動かざる事山の如し。
微動だにせず、オーラを振りまきつつ、
ただただ2匹をじっと見つめる。

大事なのはその前、
「2匹をじっと見つめる。」
に至るまでの準備。

少し遠めに2匹を確認。
これから行なわれるであろう行動を予測。
どの瞬間をどのように撮るかイメージして、
カメラをいぢくる。
すべての作業を終え、後はシャッターを切るだけというとこまで
もって行ってから、「岩」となるべくポジションに付く。

ひたすら待つ。

残念なんだけど、イメージ通りに至らない事もある。

すごくいけない事なんだと思う。

私のように自己満足以外の何者でもない輩が、
ハナイカという種の子孫繁栄の妨げとなっては、
とてつもなくいけない事なんだと思う。
どんなに名前が通ったプロカメラマンでもそんな権利はない。

ただ・・・
イメージ通りに撮影できた時の、達成感たるや、
こんなに清清しいものはない。(笑)

ひたすら待って、待って・・・・・
オス・メスが向き合い、間合いを詰めていく。

「よぉ〜い、すたーと!」
カチンコが鳴り、すでに準備万端のカメラの前で、
ハナイカの交接シーンが展開する。
2匹の天才役者は、周りなど気にせず、
一生懸命に子孫を残す営みを行なう。
この天才役者達にNGは存在しない。

そう。そうなの。
天才役者達は、いざカチンコがなり、事が始まり、
終わるまでは周りの事は見えなくなる。
私は「岩」である必要はなくなるのだ。
多少動こうが、ストロボをたこうがおかまいなし。

ものの5秒程度。

ハナイカ君を馬鹿にするつもりはないが、
小さな脳みそは周りの危険も察知出来ないほど、
子孫を残すという本能の支配される。
オスが精子の入ったカプセルをメスに託す。
たったそれだけの行動にすべてを集中する。

すばらしい事だと思う。
すばらしい行為だからこそ、「撮りたい」と思う。
なるべく、なるべく、邪魔にならないように。

で、ここからが大事な事だと思うの。
事を終えた2匹は何事もなかったように、
普段どおり泳ぎだす。
「岩」だった私も、清清しい気持ち任せて泳ぎだす。
するとハナイカ達はびっくりする。

と思うわけ。(笑)

だから、せめて、最後の最後まで、
ハナイカ君たちには、
「あれは岩だった。」と思ってもらうために、
そのまましばらくじっとして、
ハナイカ君たち同様、余韻を楽しみながら、
そっとその場を離れるのが筋なのではないだろうか。

なんて思いながら、浮上を開始した時は、
45分間過ぎていた。

45分間で押したシャッター数は3枚。
オスがカプセルを渡す直前。
渡してる最中。
渡し終わった直後。
カチンコがなってからの5秒間で3枚。


ねぇ・・・
難しいのか・・・簡単なのか・・・



2009/09/19 Keiji Hasuike





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