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小さな独り言

イルカ

2008年 5月 07日 兵庫県 須磨水族館
「イルカ」
〜水族館奮闘記1〜

え〜。
ダイバーなら誰もがあこがれる、
「イルカ」君でございます。

私も、いつかは野生のイルカを水中で撮影したいなどと言う、
ありきたりな願望を抱き、日々精進しているわけでありますが、、、

来るべきその日のために、
練習しておこうと水族館へ出向きまして、
「イルカのショー」と言うものを見学してまいりました。

が、、、

ピョンピョンとご機嫌に飛び回るイルカ君たち。
スポーツモード、連写でなんとか対応できるものの、

どーも、イマイチ。

バックにコンクリートの建物が映り込めば、
イルカの見事なジャンプシーンも興醒め。

いたしかたない。(笑)

なんて事を考えてる間に、あっさりショーは終了。
次のショーまでは1時間ほど時間がある。
須磨水族館には私の心をくすぐる者がたくさん展示されている。
「さて、、、じゃあ、水槽を周ろう。。。」
と、席を立ったときに、

「おい!」

見事に呼び止められた。(気がした。笑)

振り向くと、15cmはあろうかと言う、
分厚いアクリル越しに1匹のイルカ君がこっちを見てる。

「撮れ。」

と言わんばかりにこっちを見据え、
さっきもらった「イカ」であろうか?
クチャクチャとガムのように、口に入れては出し、
入れては出し、入れては出し、、、

「あまりかわいくないな。。。」

「いいから早く撮れ。こちとら疲れてんだ。
連休だかなんだか知らんが、いつもよりこき使いやがって。」

「まあそうグチるな。喜んでただろちびっ子たち。」
「そらそーさ。なんせこちとらアイドルだからな。」

くちゃくちゃくちゃくちゃ・・・・

「やめなさい。そのくちゃくちゃするの。」
「・・・知らんのか?噛めば噛むほど味が出るんだ、コレ。」
「・・・・まあいい。。。じゃ撮るぞ。笑え。」
「笑えと?あースマイルだな?サインを出せ。」
「サインなんぞ知るか!わかってるならビシッとカメラ見て笑え!」
「サインがないとできん。褒美も用意しろ。」
「・・・・・・・・・」
「しょーがねーな、少しだけだぞ、、、にっ。」
「・・・・・・・・・」
「どーだ、スマイルだ。なんだその不満げな顔は?」
「・・・・イマイチだ。。。」
「なに!アイドルの笑顔にケチ付ける気か?」
「・・・・・いや、ちがう。。。アクリルが汚い。。。」
「・・・それは知らん、そっち側で何とかしろ。」
「だよな、、、う〜ん。。。」

水槽の小さな生物を撮影する時なんかは、
トレーナーの袖で拭けばなんとなくきれいになるが、
今回の相手は「イルカ」君だ。
バスタオルでも用意しないといけない勢い。
で、少し考えて、、、、、
アクリルの上にカメラだけ出してみた。
手を出すと怒られそうなので、カメラだけ。(笑)

「おい、顔出してみろ。」
「えぇ〜〜。」
「いいから顔出せ。で、こっち見て笑え。」
「めんどくせーなー。」
「ちょっとだけでいいから、なっ。よっアイドル!」
「しょうがねーなー、じゃあ行くぞ!」

「あーちょっと待て、ちょっと待て。」
「なんだ!?」

「いきおいはいらん。そーっと顔だけ出せ。」
「?」
「いきおい良く出るとしぶきが上がるだろ?カメラが濡れる。」
「濡れるとどーなる?」
「壊れる。」
「(壊れる)?知らない言葉だ。。。習ってない。。。」
「・・・・・とにかく、そーっとだ、そーっと顔出せ。」
「(壊れるってなんだ?どーゆー事なんだ??)・・・こうか?」
「よし、いいぞ、そのままこっち向け。」

「カシャッ、カシャッ、カッシャ、カッシャ。」

「よし。いい感じだ。もうひとつ注文していいか?」
「(楽しい事なのか?壊れるって?)あえ、なんだ?」
「こう・・・少し動いてる躍動感みたいなものが撮りたい。」
「なんだかわかってきたぞ。ようは壊したいって事だな?」
「よく聞け。ちがう。それはまったくもってちがうぞ。」
「みなまでゆーな。わかった。こちとら天才だから。」
「おい、待てって。」

イルカ君は「ちゃぷん・・・」としぶきひとつ立てることなく、
水中へ潜り、ゆっくり泳ぎだし、プールを大きく1周すると、
私の対面で「ポコン」と顔を出し、ゆっくりこちらへ向かってきた。

「さすが、よっアイドル!」

イルカという動物は非常に賢い。
こんなに物分りのいい、かわいい動物はいないだろう。

イルカ君に答えるべく、必死にシャッターを切る。

ファインダー越しに、気持ちよさそうに、
水面をすべるようなイルカ君。
バックのプールサイドは気に食わないが、
建物よりましであろう。
もう少し、もう少し寄ってくれれば、プールサイドも消せる。
なんて思った瞬間、上を向いてた「くちばし」が水面に消える。

そして。

私めがけて放水。(笑)

で、そのままアクリル際で反転し、尾っぽふりふり。
水、じゃばじゃば。(笑)


とっさにカメラをお腹に抱え、丸まった私。
背中ずぶぬれ、したたる海水。

「ねー、壊れた?ねーねー壊れた??いやー楽しーねー!」

テンションの上がったイルカ君はプールを所狭しと泳ぎ回り、
ジャンプを繰り返す。


・・・・・・完敗だ。。。。


そっと・・・・
タオルが目の前に差し出された。
飼育員さんだ。
「大丈夫ですか?ごめんなさいね、やんちゃなもので。
そろそろ次のショーが始まりますので、お席のほうへ・・・」


・・・・・・完敗だ。。。。
見事な・・・完敗だ。。。


いつの日か訪れるであろう、
野生のイルカを水中で撮影する時の練習に
なるのか?ならないのか?はもう関係ない。

私とイルカ君の戦いが始まった。(笑)



2008/05/16 Keiji Hasuike





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