2006年 10月 04日 和歌山県 田辺 「天神崎ビーチ」 ※左上の白い「房」が卵。 |
〜大切な物〜 大切な物を失うということは、 すごく悲しい事なわけで、、、 大切な物が増えれば増えるほど、 失うリスクは大きくなるのに、 たくさん、欲しくて、探して、無理して、手に入れて。 手に入れた時の喜びが大きければ大きいほど、 失う時の事など考えもしない。 なんとも人間という生き物は欲深なもので。 写真は、タコの母親の様子。 じっくり観察すればするほど、 この子の大切な物は1つしかない事が良くわかる。 汚れれば、やさしく払い、 外敵が近づこうものなら、隠し、 一生懸命、新鮮な水を送り続け、 約100以上の米粒大の卵がついた「房」を数十本、 1匹の母親が、一手に引き受け、 何万という、新しい命の誕生のために、最善を尽くす。 自らの命と引き換えに。。。 そう、大切な物を守っている最中は、 一切、エサはとらない。 大切なものから、一瞬たりとも離れたりしない。 孵化までは数週間。 私達には想像すら出来ない、数週間。 外敵からの攻撃に耐え、飢えに耐え、 体力の消耗を最小限に抑えながらも、 痩せ、衰え、必死にその時を待ち続ける数週間。 孵化直前まで最後の力を振り絞り、 生まれてくるわが子のために、新鮮な水を送り続ける。 わが子の誕生を見届けると、張り詰めていた1本の糸が、 音も無く、静かに途切れ、安心したように、 いたって、安らかに、その一生にピリオド打つ。 タコの一生。 〜大きな海の小さな物語〜 数字的には、1の母親から、何万もの子供達。。。 子孫を繁栄させるためには、実に効率の良い様に見えるが、、、 なんだろう。。。 なんなんだろうか。。。 この気持ちは。 行き場の無い、やりきれない感じ。。。 なんともグロテスクな風貌で、 イセエビを食い散らかし、 貝を食い散らかし、 カニを食い散らかし、 8本の足をたくみに使い、水中を泳ぎ、 体色を自由に変化させ、辺りに身をなじませ、 墨を吐き、威嚇して、外敵から身を守り、 人間の乱獲から逃れて立派に成長した猛者たちでさえ、 子孫繁栄のために当たり前の様に身を投げる。 「悲し」くなんかない。 「切ない・・・・。」 なんて言葉だけでは終われない。 大切な物を全力で守り通す。 誰に教えられた訳でもなく、 誰に誉められる訳でもない、 本能という、営み。 旅立って行く何万もの子供達は、 この世に生を受け、初めて目にする物は、 自分の誕生の為に変わり果てた母親の姿。 母親はその亡骸で何を訴え、 子供達は何を学ぶのか? 旅立って行く何万もの子供達も、 数年後には、当然のように同じ事を同じ様に繰り返す。 大切な物を全力で守り通す。 本能という、営み。 そんな大切な物、 あなたはお持ちですか? そんな大切な物、 実は近くにあったりする事、 あなたはお気づきですか? 私なんかはね、 失って初めて気付いたりするんです。 そんな大切な物にね。 私なんかはね。。。(笑) 2006/10/02 Keiji Hasuike |